賃貸物件をゴミ屋敷にしてしまった借り主は、想像以上に多くのリスクと厳しい現実を突きつけられます。まず最も直接的なのは、賃貸借契約の「債務不履行」に問われる可能性です。多くの賃貸契約には、善管注意義務、すなわち借り主が善良な管理者として物件を適切に維持管理する義務が明記されています。ゴミ屋敷化は、この義務に違反する行為と見なされ、契約解除の対象となります。家賃の滞納がなくとも、物件の管理状況が悪ければ、貸し主から強制退去を求められることもあります。次に、退去時に発生する「高額な費用」が大きな負担となります。通常の退去時の原状回復費用に加え、ゴミの撤去費用、特殊清掃費用、消臭費用、さらには害虫駆除費用などが加算されます。ゴミの量や汚染の程度によっては、これらの費用が数十万円から数百万円に上ることも珍しくありません。敷金だけでは賄いきれない場合、追加で費用を請求され、支払いが困難になれば、法的な手続きに進むこともあります。また、ゴミ屋敷化は、借り主自身の「健康被害」にも直結します。不衛生な環境は、ダニ、ゴキブリ、ハエなどの害虫を大量発生させ、アレルギーや感染症のリスクを高めます。カビの繁殖は呼吸器系の疾患を引き起こし、悪臭は精神的なストレスを増大させます。十分な換気ができない状況は、健康だけでなく、精神的な安定も損ないます。さらに、ゴミ屋敷化は「近隣住民とのトラブル」を招きます。悪臭や害虫、騒音などが原因で苦情が寄せられ、孤立感を深める結果となることもあります。このような状況は、借り主の社会生活にも悪影響を及ぼし、再出発を困難にする要因となりかねません。賃貸物件でのゴミ屋敷化は、借り主にとって単なる片付けの問題ではなく、自身の財産、健康、そして社会的な信用まで失う可能性を秘めた深刻な事態なのです。
借り主が陥るゴミ屋敷のリスク