私の家の隣は、いつからかゴミ屋敷と呼ばれるようになりました。最初は庭に置かれたいくつかのゴミ袋だったものが、次第にその数を増やし、やがては窓の高さを超えるほどの山となったのです。風の強い日にはビニール袋が我が家の庭に舞い込み、夏の暑い日には、窓を開けることを躊躇うほどの異臭が漂いました。そして何より耐え難かったのは、大量に発生するハエやゴキブリでした。洗濯物を取り込む際に服についていないか、家の中に侵入してこないかと、毎日が不安とストレスの連続でした。何度も直接お話ししようかと思いましたが、トラブルになるのが怖くて行動に移せませんでした。町内会にも相談しましたが、解決には至りません。心身ともに限界を感じた私は、すがるような思いで、市の保健所に電話をかけることにしました。匿名での相談も可能とのことでしたが、私は名前を明かし、これまでの経緯と現在の被害状況を、震える声で必死に訴えました。電話口の担当者の方は、私の話を遮ることなく、静かに、そして真摯に聞いてくれました。それだけで、少しだけ心が救われた気がしました。数日後、保健所の職員の方が現地を視察に来てくれました。そして、「これは確かに衛生上、問題がありますね」と、状況を客観的に認めてくれたのです。その後、保健所は隣家の住人に対して、複数回にわたり衛生改善の指導を行ってくれたようです。すぐに劇的な変化があったわけではありません。しかし、数週間が経った頃、隣家の庭のゴミが少しずつ減り始めたのです。完全に綺麗になったわけではありませんが、少なくとも異臭や害虫の発生は、以前に比べて明らかに改善されました。保健所に相談したことで、長年一人で抱え込んできた問題が、公的な問題として認知され、解決に向けての一歩が踏み出された。その事実が、何よりも私の心の支えとなりました。もし、同じように悩んでいる方がいるなら、一人で抱え込まず、勇気を出して保健所に相談してみてほしいと、心から思います。