私が住んでいた1DKのアパートは、いつしか私の心の状態を映す鏡になっていました。仕事のプレッシャーと人間関係のストレスで、何もかもが億劫になり、気づけば部屋は、コンビニの弁当容器とペットボトル、そして脱ぎ散らかした衣類で、足の踏み場もなくなっていました。異臭もひどく、隣の部屋から苦情が来たことで、私はようやく、このままではいけないと、重い腰を上げる決意をしました。しかし、どこから手をつけて良いのか、皆目見当もつきません。途方に暮れた私は、インターネットで見つけた片付け業者に、震える手で電話をかけました。数日後、見積もりに来てくれたのは、私と同年代くらいの、爽やかな男性スタッフでした。彼は、部屋の惨状に驚く様子も見せず、ただ静かに私の話を聞いてくれました。「大変でしたね。でも、大丈夫。僕たちがきれいにしますから」。その一言に、私はどれだけ救われたか分かりません。提示された見積もり金額は、25万円。決して安くはありませんでしたが、もう自分ではどうすることもできない、という思いから、その場でお願いすることにしました。作業当日、2人のスタッフが、驚くほど手際よく、ゴミを分別し、袋に詰めていきます。私は、ただ隅で、その光景をぼうぜんと眺めているだけでした。半日も経たないうちに、部屋からゴミの山は消え去り、何年ぶりかに、フローリングの床がその姿を現しました。その後、水回りのクリーニングと、部屋全体の消臭作業が行われ、私の1DKは、まるで入居したての頃のように、生まれ変わりました。25万円という出費は、確かに痛かった。しかし、私がそれと引き換えに手に入れたのは、単に綺麗な部屋だけではありません。それは、健康で、人間らしい生活を取り戻すための、そして、もう一度前を向いて歩き出すための、いわば「再起の権利」だったのです。あのゴミだらけの部屋と共に、私は、無気力で、未来を諦めていた自分自身にも、別れを告げることができたような気がします。