私が所有する賃貸物件が、まさか「ゴミ屋敷」と化すとは夢にも思わなかった。最初は、家賃の滞納が始まったことから異変に気づいた。何度連絡しても連絡がつかず、不審に思った近隣住民から「ひどい臭いがする」「虫がいる」という苦情が寄せられるようになった。恐る恐る部屋の状況を確認しに行った時、私は自分の目を疑った。玄関を開けた瞬間に押し寄せる強烈な悪臭、そして足の踏み場もないほどゴミが積み上がった部屋の惨状は、想像をはるかに超えるものだった。借り主は、精神的に不安定な様子で、私の問いかけにも曖昧な返答しかせず、片付けや退去の要求には一切応じようとしなかった。私は弁護士に相談し、法的な手続きを進めることになったが、強制執行に至るまでには多額の費用と長い時間がかかった。そして、ようやく部屋を明け渡してもらえた時には、物件は見るも無残な姿になっていた。壁や床にはカビが繁殖し、排泄物や腐敗物が染み付いており、建物全体が悪臭を放っていた。ゴキブリやネズミが大量発生し、その痕跡も至るところに残されていた。通常のクリーニングでは対応できないため、特殊清掃業者に依頼することになったが、その費用は数百万円にも上った。さらに、壁紙や床材の交換、水回りの設備交換など、大規模なリフォームも必要となり、その間の家賃収入ももちろんゼロだ。この一件で、私の賃貸経営は大打撃を受け、他の物件の入居者にも不安を与えてしまった。オーナーとして、私は物件の適切な管理を怠っていたわけではないが、借り主のプライバシーの問題もあり、どこまで介入すべきか、その線引きは非常に難しい。ゴミ屋敷問題は、単に個人の問題ではなく、私のような貸し主にとっても、非常に厄介で、金銭的・精神的に大きな負担を強いる深刻な問題なのだと痛感した。