私の静かな生活が崩れ始めたのは、数年前から隣の家が徐々にゴミで埋め尽くされ始めたことがきっかけでした。最初は庭先に少し荷物が出ている程度だと思っていましたが、気づけば窓が閉まらなくなり、夏場には耐え難い悪臭が私の家のリビングまで漂ってくるようになりました。窓を開けることもできず、庭で洗濯物を干すこともできなくなりました。さらには、見たこともないような大きなネズミやゴキブリが私の家にまで侵入してくるようになり、精神的に追い詰められる日々が続きました。町内会を通じて何度も市役所に相談に行きましたが、行政の方からは「個人の財産権があるため、すぐには強制撤去できない」というもどかしい返答ばかり。それでも、自治体が新しい条例を制定し、何度も隣の住人に説得を続けてくれていることは知っていました。そして、ついにその日がやってきました。行政代執行の当日、朝早くから家の前には数台のパトカーと、見たこともないような大きなトラック、そして全身を防護服で固めた作業員の方々が集まりました。黄色いテープが張られ、物々しい雰囲気の中で作業が始まりました。山積みになったゴミが次々とトラックに積み込まれていく様子を、私は家の窓から震えながら見守っていました。そこから出てくるゴミの量は想像を絶するもので、腐敗した食品や古紙、壊れた家電などが地層のように積み重なっていました。作業が進むにつれて、数年ぶりに隣家の壁の色が見えたとき、私は言葉にできないほどの安堵感に包まれました。夕方になり、全てのゴミが運び出され、庭の雑草も綺麗に刈り取られた後の風景は、かつて私が知っていた隣の家の姿そのものでした。執行が終わった後の静寂の中で、私はようやく深く息をつくことができました。しかし、代執行を呆然と眺めていた隣人の寂しげな背中を思い出すと、ただ喜ぶだけではいられない複雑な感情も湧いてきます。行政執行という強硬手段が必要になる前に、もっと何かできることはなかったのか、地域社会としての関わり方を考え直すきっかけにもなりました。
隣家がゴミ屋敷化した私の苦悩と行政執行が行われた日の記憶