ゴミ屋敷を象徴する光景として真っ先に挙げられるあるあるが、壁際や床一面を埋め尽くす大量のペットボトルです。それも中身が空のものだけではなく、数センチだけ液体が残ったまま放置されたものが層を成しているのが一般的です。飲みかけの飲料は時間と共に変色し、中にはカビが発生して黒ずんだり、発酵して容器がパンパンに膨らんだりしているものもあり、これらが放つ独特の甘酸っぱい腐敗臭はゴミ屋敷特有の空気を作り上げます。なぜ飲み切らずに放置するのかと言えば、住人にとって「蓋を閉めて置く」という行為が、ゴミを捨てるという面倒な工程を先延ばしにするための免罪符になっているからです。しかし、買ってきたものを食べた後、その容器を洗ってゴミ袋に入れるという極めて単純な行為が、彼らにとってはエベレストに登るほどの重労働に感じられるようになります。食べ残しが入ったままの容器は、時間の経過とともに異臭を放ち、ハエやゴキブリといった害虫を呼び寄せる強力な磁石となります。特に夏場ともなれば、その腐敗のスピードは加速し、部屋全体に染み付いた独特の酸っぱい臭いは、近隣住民とのトラブルの火種となります。また、ゴミ出しの指定日に起きられなかったり、近所の目を気にして大量のボトルを出すことを躊躇したりしているうちに、ペットボトルは部屋の隅で強固な軍勢を形成し、いつしか触れることすら忌まわしい存在へと変わっていきます。さらに深刻なケースでは、トイレに行くことすら億劫になった住人がペットボトルを排泄の容器として使用することもあり、これは衛生面でも精神面でも末期的な兆候と言えます。清掃業者が入る際、最も重量があり、かつ処理に時間がかかるのがこれらの液体入りボトルです。一本ずつ中身を捨て、ラベルを剥がし、キャップを分別するという作業は果てしなく、ゴミ屋敷の深淵を物語る作業となります。ペットボトルの山は、単なる飲料の残骸ではなく、日々の生活を丁寧に送ることができなくなった住人の疲弊した精神状態がそのまま形になったものと言えるでしょう。